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たとえ話


by nako1111

『空が青い日に』


トラボケ2006、第3回のお題は、


「わたしの名前を呼ぶのは、 だれ?」

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「ねえ、叔父さん、叔父さん」

「うん?何だい、那子?もしかして、この前の宿題の愚痴じゃないだろうね?」

私は、読んでいた本から視線を外して、窓枠に頬杖をして外を眺めている那子に視線を向けた。

「ああ、あれね。ないない。叔父さんに聞いた私も馬鹿だったし。だけど、先生には『モノを大事にしてるな』って褒められたから、心配しないで。そんなことで、まあ、あれはあれで。・・・ところで、あのロボットはどうしたの?」

私は、読みかけの本を一旦閉じて、ゆっくりと、立ち上がると、那子の隣に並んで座った。

今日は、青い空が広がっている。

「ああ、あれね。那子の先生には悪いんだけど、あれ以来動かなくなっちゃってさ、物置小屋だね」

「物置小屋って・・・。叔父さんの家にそんな大そうな部屋あったっけ?」

「酷いな・・・。それじゃあ、まるで私の家が、酷い家みたいじゃないか」

愕然とした気持ちに耐えながら、那子の方に顔を向けて抗議を試みる。だが、しかし・・・。

「え、実際、そうじゃん」

「・・・」

一瞬にして、努力が灰と化す。最近一番胸に響く言葉である。

「ああ、もう、そんなこと聞きたかったんじゃなかったの。えっとね、夢の中で、『誰かに名前を呼ばれる』としたら、誰だと思う?」

「うん?それは、何か、夢判断の類?」

「・・・まあ、そうね、流行っているの、学校で。『私の名を呼ぶのは、だれ?』って感じで」

何だか、那子が、さっきからこちらの方を向かずに、外の青い空ばかりを眺めていて、顔が見えないので何を考えているのかさっぱり分からないが、しかし、夢判断か。

「そうだな。夢判断ってことは、深層心理を知るってことだよね。となると、『名を呼ばれる』ってことだけど、つまり、自分の『名を呼ぶ』誰かってことは、その人物は、自分のことを知っている人物。そして、その人物を予め、自分自身で予測するってことは、『憎からず思っている人物』ってことになるのかな。嫌な奴に自分の名前なんて呼んで欲しくないだろう?」

「確かに、呼んで欲しくない人を思い浮かべるより、呼んで欲しい人のことを考えるかも・・・。でも、憎からずって・・・。何時代の人よ、叔父さん」

未だに、空を見つめたまま、こちらの方を見返さない那子である。まあ、確かに、空はここ最近一番の青さで、清清しい。見飽きた私の顔より、青い空の方が、見ていて楽しいだろう。

「少なくとも、この時代の人間だと思いたいけど・・・。まあ、つまり、名前って言うのは、とても大切なんだよ。名は人を縛るものだからね。他人が自分の名を扱うということは、その人に自分が縛られると言うことだ。私なら、嫌な奴には、縛られたくないな」

「・・・・。で、結局、叔父さんの名を呼ぶのは誰なの?」

今度こそ那子が、顔を空から動かし、私の方を向くかと思ったら、今度は、その視線が那子の手元に移った。そして、その手はと言うと、何だか、ごにょごにょと、しきりに動かしている。

「うーん、そうだな・・・。って・・・、ちょっと恥ずかしいんだけど」

急に自分が言っていたことを思い返して、恥ずかしさが頭に浮上してくる。心臓も、微妙に通常より30%早く鼓動している気がする。大体、『憎からず思っている人』ってなんだ。そんな私の躊躇とは裏腹に、那子は、突如叫びだした。

「・・・何、乙女みたいなこと言ってんのよ!早く言いなさいよっ!」

更に、叫んだかと思うと、那子が凄い勢いで、迫ってきたかと思うと、細い腕を私の首に巻きつけた。

何時もの那子と言えば、何時もの那子であるが、顔を赤くしてまで、何をそんなに興奮しているのか。乙女と言うモノは、ホントに厄介な代物である。黙っていたと思ったら、その後直ぐに、この様な有様である。

しかし、実際は、そんなことを暢気に分析している場合ではなかった。なんせ、那子の首を締め付ける力ときたら、凄まじいものがある。下手をしたら・・・。考えたくない。しかし、酸素が上手くすえないと、こんなことを暢気に考えてしまうのだから、人間恐ろしいものだ。

「うわああっ!!そんな首を!?し、し、死んでしまう!!!・・・・そ、そ、そ、そんなこと言うなら、那子から言ってくれよっ!」

私は、息も絶え絶えに、懸命に声を振り絞った。

「!!??」

すると、急に、ピタリと私の首を締め付ける力が弱まり、仕舞いには、完全に無くなってしまった。そして・・・。

「そ、そ、そんなこと言えるわけないでしょっ!そんなこと他人に言ったら、見れなくなっちゃうじゃない!」

「・・・ぐへっ。はあはあ。・・・そ、そ、そんな、なんか滅茶苦茶な・・・。大体、これまじないじゃないんでしょう?まじないじゃないんだったら、見れなくても良いじゃないか・・・。・・・って、まじないなの?自分の名を呼んだ人と・・・・」

「!!??」

何故だか、さっき以上に那子が、赤く今に倒れてしまいそうな顔で、私の方を睨んでいる。

しかし、そう言う話ならば、話は簡単である。実際に、見た夢を話せば良いだけの話である。まあ、色々と考えるところもあるが、事実は事実であるし、裏の話がそう言うことならば、別段、恥ずかしがることもないだろう。

大体良く考えてみると、別段『憎からず思っている人』と言うのも、恥ずかしがる様な人物ではなかった。

「そ、そ、そうか・・・。だったら、最初からそう言えば良いのに。昨日、丁度、呼ばれたんだよ、名前」

「・・・え、だ、だ、だ、誰に!あ、でも、それ言ったら、叔父さん・・・。あ、でも・・・」

何故だか、凄い動揺した顔で、私の方を見つめてくる那子。焦点があってない感じで、危ない人の様である。那子をこれほどまでに動揺させるものとはいったい?しかし、こんな慌てた那子を見たのは久方ぶりで、凄い新鮮な感じがする。

しかし、動揺した那子を見続けるのも、何だか体に悪い気がする。

「大丈夫、大丈夫、その人とは、もう十分に仲が良いから」

と、安心させようと、答えるのだが、何だか浮かない表情である。どうなっているのやら。

「え、・・・そ、そうなの?ま、ま、まさか、わた・・・」

「あ、那子じゃないよ」

「・・・・あ、そう・・・」

返事も、力に欠ける。しかし、私には知る由もない理由でもあるのだろう。なんせ、今の若者は、色々あるみたいだから。とりあえず、答えを教えることにした。

「何だか、今日那子、色々忙しいね。最近の若者は、色々あるみたいってことは理解してるつもりだけど・・・。まあ、兎に角、その人とは、もう十分に仲が良いから、那子が気にすることないよ。で、その人だけど、那子もよく知っている人だから」

「え、私が知ってる人!?だ、だ、だ、誰?」
























「・・・君のお父さん」

「・・・・」

何故だかその後、無言のままに、グーで殴られた。ここ最近一番の不条理な出来事である。

そして、那子と言えば、私がもんどりうっている間に、青い空をもう一度見つめて、何か言っているようであった。しかし、聞くには、あまりにも小さい声だったので、痛みをかみ殺すことに全精神を集中させていた私には、那子が何と言ったのか、知ることが出来なかった。

聞けなくて、良かったのか、悪かったのか、私には知ることが出来ない。


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今となっては、どうでも良い情報ですが、那子嬢のお父さんは、叔父さんのお兄さんですので。そして、叔父さんとお兄さんは、とても仲良し兄弟です!(ホント、どうでも良い)

青春してみました。ちなみに、那子さんは、何と言ったのでしょうか?これは、皆様の妄想に委ねます。(何)
by nako1111 | 2006-04-10 01:18 |